●視察概要
視察日時:令和6年8月8日
視察者 :八丈町長 山下奉也 企画財政課 土屋巧 総務課 寺嶋和樹
視察目的:南海トラフ巨大地震による津波発生の可能性が高いとされ、多様な津波防災対策を行っている室戸市の現状を把握することで、八丈町における津波防災対策の参考とし、津波救命艇の必要性や設置場所の再確認を行う。
視察先 :室戸岬町丸山長寿園津波救命艇、佐喜浜町津波避難タワー、津波シェルター
●室戸市の概要
1. 地理と人口
室戸市は、高知県の南東部に位置し、太平洋にV字形に突き出た室戸岬を中心に海岸線53.3㎞の海岸線を有する市で2024年7月現在の室戸市の人口は約11,300人、高齢化率約51%であり、少子高齢化が進んでいる。
2. 津波被害
室戸は歴史的に大きな津波被害を受けてきた。特に、昭和36年(1961年)の東南海地震では、沿岸部が壊滅的な被害を受け、多くの犠牲者が出た。この経験から、室戸市では津波防災に対する意識が非常に高く、様々な防災対策が実施されている。
●視察内容
1.室戸市副市長との対談
室戸市副市長との対談では、室戸市の防災対策における具体的な情報を得ることができた。室戸市では、昭和36年の東南海地震の教訓を活かし、津波避難タワーやシェルターの整備と様々な取り組みが行われ、津波に対する高い防災意識が伺えた。
2. 施設視察
丸山長寿園:高齢者福祉施設の特別養護老人ホーム。津波ハザードマップの浸水想定区域内にあり、非常時における避難経路や避難場所が明示され、定期的な避難訓練を実施している。また、施設内に津波救命艇を設置している。
佐喜浜町:佐喜浜町は室戸市の北東端にある人口約1,100人の町で南海トラフ巨大地震による津波が発生した際に1番危険な区域とされ、町の大部分が浸水区域となっており、津波避難タワー及び津波シェルターが整備されている。
• 津波避難タワー:タワーは平成29年3月竣工。海抜14.3mの港町に設置されており、鉄骨構造3階建で収容人数は150人。避難ステージが2か所あり、第1ステージ100人、第2ステージ50人で地上高10m。施設内には非常用電源や飲料水などが備えられ長期滞在にも対応できるよう設計されている。
• 津波シェルター:全国初の津波避難シェルターは3億5,300万円で建設され平成28年8月に完成。避難タワーさえも設置する場所がなく、高齢化の進んでいる地域であることから建設された。コンクリート製の頑丈な構造で、奥行き約30m幅3メートル、高さ3.5m、入り口には浸水を防ぐ二重の止水扉が設置されており、最奥部にはらせん階段で山上に出ることが可能な構造となっていた。シェルター内には、約70名の収容が可能で非常用発電機や寝具、トイレなども備えられている。
津波救命艇の必要性
南海トラフ巨大地震による津波の発生が懸念される室戸市において、高台への避難が困難な高齢者や障害者、そして津波が到達するまでの時間が短い場合、津波救命艇は貴重な命を守るための手段となる。特に、丸山長寿園のような福祉施設や、沿岸部の集落では、津波救命艇の設置が有効と言える。
八丈町においても、南海トラフ巨大地震が発生した場合同様の状況が考えられる。八丈島は土砂災害警戒区域の指定が多く、地震が発生した際、道路が寸断される恐れがあり特に、洞輪沢地区のような沿岸部で道路が寸断される可能性が高いため、津波救命艇の設置は住民の安全確保に大きく寄与する。
室戸市の防災対策と八丈町の防災
室戸市は、津波災害等のリスクが高い地域であり、防災対策等で共通の課題がある。室戸町は過去の教訓を生かし、防災対策への取り組みが進んでおり、八丈町は、室戸市の災害対策を参考として効果的な防災対策に取り組んでいく必要がある。
今後の課題
• 津波救命艇の管理マニュアル作成
• 地区住民への説明会
まとめ
今回の視察を通じて、室戸市副市長との対談をはじめ、防災対策に対しての意識の高さや市内を視察したことで、実際の施設整備への取り組みに対し、非常に参考となった。その中で、八丈町が今南海トラフ大地震に備え早急に行える対策として、津波救命艇の必要性を再認識した。今後も住民の安全、安心な暮らしを維持していくため八丈町の防災力向上へ取り組んでいきます。
【問い合わせ】
総務課庶務係 電話 2-1121