Asta の日記 DAY 19 「八丈島の洗礼」

 島に住むうえでは、島の生き物になれる必要がある。はじめて家の中でヤモリを見かけて、大騒ぎになった時に比べて、11ヶ月間で色々な虫に出会って随分落ち着いてきた。けれども、気候が寒くなりつつ、外のものが暖かい家の中に避難している。その証拠に、最近もとある試練があった。

 その試練は朝の2時に変な音に起こされることで始まった。ベッドから飛び出して、電気をつけたら近くにサソリモドキがいた。驚いて、部屋から出たら「今のタイミング?どうしよう?寝たいのに」のことしか考えなかった。外でしか見ていなかった虫は家の中では余計にでっかく、怖く、不親切にみえた。夜中疲れて、私が一番弱い時にサソリモドキを相手にしなきゃいけないなんて…酸と匂いの特徴についても聞いたことがあったから、近寄る勇気がなかった。疲れで頭が回らなくて、とりあえず、窓と扉を開けることにした。

 しかし、扉を開けようとした瞬間また何かが動いた。気のせいかと思って電気を付けたら手の平の大きさほどのクモがいた。叫びたい気持ちを飲み込んで(近所迷惑だめ!)、自分の家の中で人質になった気がした。「だめだ」と思い、箒でクモを外へ出そうとした。もちろん、クモも動いて、勝負はクモが隅で隠れて引き分けで終わった。少なくとも扉だけは開けたぞと思って、寝室に戻るとサソリモドキが毛布まで上がってきてしまっていた。その時、頭が真っ白くなって、今夜2つのボスに勝てないと自覚した。次の選択は撤退で短いソファで寝た。

 結局平和が戻るまではあと2日間かかった。クモはラウンド③で箒を使って外に出せたが、サソリモドキは気づかず毛布と洗ってしまった…
 この試練は八丈島へ住むための通過儀礼に感じた。これで最後の試練でしたらありがたいね。